スパナチュde英語:海外ドラマ「スーパーナチュラル」で英語学習

海外ドラマ「スーパーナチュラル」を使って単語・フレーズ・文法などを勉強していきます。「スパナチュ」のすべてのセリフの意味を確認していき、自分が難しいと思ったところを中心に解説します。「スパナチュ」を楽しみながら英語の勉強をしたいと思っている人の役に少しでも立てばと思います。

シーズン1 2-14 Well, hell, you know I’m in. ああ、分かってるだろうが、俺も乗るぞ。

こんにちは。海外ドラマ「スーパーナチュラル」で英語の勉強をしています。前回ウェンディゴによってロイが犠牲になりました。暗澹たる気持ちのなか、朝を迎えたと思われます。

 

Haley: I don’t… I mean, these types of things, they aren’t supposed to be real.(そんな…その、そういう類のものが、そんなものが現実のはずがないわ。)

Dean: I wish I could tell you different.(違うって言えたらいいんだが。)

Haley: How do we know it’s not out there watching us?(もうこの辺にはいなくて、私たちを見張ってないってどうしてわかるの?)

Dean: We don’t. But we’re safe for now.(いないかどうかは分からない。だが、今のところは安全だ。)

Haley: How do you know about this stuff?(どうしてこんなことについて知っているの?)

Dean: It kind of runs in the family.(家族で受け継がれてきたことでね。)

Sam: Hey. So we’ve got half a chance in the daylight. And I, for one… wanna kill this evil son of a bitch.(なあ。日中ならわずかにチャンスはある。そして僕は、第一に…このくそ野郎をぶっ殺したい。)

Dean: Well, hell, you know I’m in.(ああ、分かってるだろうが、俺も乗るぞ。)

 

ヘイリーはウェンディゴのことについて、these types of things, they aren’t supposed to be real.「そういう類のものが、そんなものが現実のはずがないわ」と言います。be supposed to doは「~することになっている、~しなければならない」が一般的な意味ですが、be supposed to be C「(一般に)Cであると思われている」の意味もあります。いまいちどちらの意味とは決めきらないのですが、「そんなものは現実に存在することになっていない」→「存在するはずがない」という意味だと取っておきます。

 

ディーンはそれに対してI wish I could tell you different.「違うって言えたらいいんだが」と言います。このdifferentですが、辞書を引くと副詞的に「違って」という意味があり、Think different.「考え方を変える」という例が出てきます。このThink different. はアップルの広告のキャッチコピーだったものですが、実は文法的にはいろいろと厄介な問題が含まれています。つまり単純にThink differently. と同じ意味で使われているわけではないということです(補足情報は最後に載せておきます)。で、スパナチュの場面ではどうなのでしょうか?このセリフを聞いて真っ先にアップルのキャッチコピーを思い浮かべて、それと同じ使い方のdifferentなのかなと思いましたが、はたしてディーンはいったいどういうつもりで使ったのでしょうか。正直分かりません。ここではとりあえず、「違うことを言えたらいいんだが」という意味であると取っておきます

 

ウェンディゴについて知っているディーンに、「どうして詳しいの?」という当然の疑問をぶつけるヘイリー。ディーンはIt kind of runs in the family.「家族で受け継がれてきた」と答えます。kind ofはクッションというか、ぼかす表現というか、そんな感じの表現ですね。

 

そこへサムがやってきます。少し前にはこんなところ放っておいてさっさと帰ろうと言っていたサム。しかしロイが犠牲になったことで頭にきたのでしょうか。we’ve got half a chance in the daylight. And I, for one… wanna kill this evil son of a bitch.「日中ならわずかにチャンスはある。そして僕は、第一に…このくそ野郎をぶっ殺したい。」と言います。half a chanceはチャンスのさらに半分ということで「わずかなチャンス」のような意味で、If given half a chance, …「もし機会がわずかでもあるなら、~」という形で使われることも多いようです。サムも決して薄情なわけではないんですよね。

 

サムに対してディーンはyou know I’m in.「分かっているだろうが、俺も乗るぞ」と返します。I’m in.「参加します、私も入れて、その話乗った」などの意味です。Count me in.「私も(頭数、仲間に)入れておいて」のinと同じような使い方ですね。フレーズとして覚えておきたいものです。

 

補足情報

アップルのキャッチコピーThink different. を考えたときに、その文法が問題になったという話。

They debated the grammatical issue: If “different” was supposed to modify the verb “think,” it should be an adverb, as in “think differently.” But Jobs insisted that he wanted “different” to be used as a noun, as in “think victory” or “think beauty.” Also, it echoed colloquial use, as in “think big.” Jobs later explained, “We discussed whether it was correct before we ran it. It’s grammatical, if you think about what we’re trying to say. It’s not think the same, it’s think different. Think a little different, think a lot different, think different. ‘Think differently’ wouldn’t hit the meaning for me.” (Walter Isaacson, Steve Jobs, 329-330.)

(筆者訳)

「彼らは文法的な問題を議論した。もしdifferentが動詞thinkを修飾しているとすると、それはthink differentlyのように副詞であるべきだと。しかしジョブズはdifferentを名詞として使いたいと言い張った。すなわちthink victoryやthink beautyのように。またこれはthink pigのように口語的使用方を思わせる。後にジョブズは次のように説明した。「広告に出す前に、この表現が正しいかどうか我々は議論したんだ。我々の言いたいことを考えてくれれば、これは文法的に問題ないんだよ。同じことを考えるな、違うことを考えろってね。ちょっと違うことを考えろ、全然違うことを考えろ、違うことを考えろ。「think differently(違った方法で考えろ)じゃあ、私の言いたい意味にヒットしないんだ。」

 

ジョブズはこれで文法的なんだと言うけれども、周りの人は「文法的にどうなの」と思ったということで、言葉というのは一筋縄ではとてもいかないですね。

 

参照文献

井上永幸赤野一郎 (編) (2018)『ウィズダム英和辞典』(第4版), 三省堂.

Isaacson, Walter (2011) Steve Jobs, Simon & Schuster.

鈴木亨 (2014)「Think different の言語学 : 創造的逸脱表現を支える文法のしくみ」『山形大学人文学部研究年  報』11巻, pp. 69-86.