スパナチュde英語:海外ドラマ「スーパーナチュラル」で英語学習

海外ドラマ「スーパーナチュラル」を使って単語・フレーズ・文法などを勉強していきます。「スパナチュ」のすべてのセリフの意味を確認していき、自分が難しいと思ったところを中心に解説します。「スパナチュ」を楽しみながら英語の勉強をしたいと思っている人の役に少しでも立てばと思います。

シーズン1 2-16  He pissed it off. 彼は奴を怒らせたんだ。

こんにちは。海外ドラマ「スーパーナチュラル」で英語の勉強をしています。ウェンディゴを倒すために森の中を進むサムたち。そこでサムは何かを発見します。

 

Sam: Dean.(ディーン。)

Dean: What is it?(なんだ?)

Sam: You know, I was thinking that those claw prints, so clear and distinct… they were almost too easy to follow. [ウェンディゴの声、突然ロイの死体が木の上からヘイリーの近くに降ってくる] You okay? You got it?(あの、思うんだが、この爪の跡は、とてもはっきりしていて…追うのが簡単すぎる。大丈夫か?けがしてない?)

Dean: Damn it, his neck’s broken. All right, come on. Okay, run, run, run! Go, go, go!(クソ、首が折られてる。よし、来い。よし、逃げろ!行け!)

Sam: Let’s go. Come on. I got you. I got you.(行くぞ。ほら。大丈夫だ。大丈夫。)

Ben: Haley!(ヘイリー!)

Sam: Dean!(ディーン!)

[ディーンとヘイリーが捕まり、サムとベンの二人になる]

Ben: If it keeps its victims alive, why would it kill Roy?(獲物を生きたままにするなら、どうしてロイを殺したの?)

Sam: Honestly, I think because Roy shot at it. He pissed it off.(正直言って、たぶんロイが撃ったからだ。ロイは奴を怒らせたんだ。)

Ben: They went this way.(こっちの方に行ったみたいだ。)

Sam: It’s better than breadcrumbs.(パンくずよりいいじゃないか。)

[ウェンディゴのすみかにたどり着き、ディーンたちを見つける]

Sam: It’s okay. It’s okay. It’s okay. Dean.(大丈夫だ。大丈夫。大丈夫。ディーン。)

Ben: Haley, wake up.(ヘイリー、起きて。)

Sam: Dean. Dean. Hey, you okay?(ディーン。ディーン。おい、無事か?)

Dean: Yeah.(ああ。)

Ben: Haley. Haley, wake up. Wake up.(ヘイリー。ヘイリー、起きて。起きて。)

Sam: Gotcha. I thought it killed you. You sure you’re all right?(よし。殺されたかと思った。本当に大丈夫か?)

Dean: Yeah. Yeah, where is it?(ああ。ああ。あいつはどこだ?)

Sam: It’s gone for now.(今のところいない。)

Haley: Tommy. Tommy. Cut him down. We’re gonna get you home.(トミー。トミー。彼を下ろして。家に連れて行ってあげるわ。)

Dean: Check it out.(見ろ。)

Sam: Flare guns. Those will work.(照明弾か。使えるぞ。)

 

サムは周りの木にウェンディゴの爪の跡がついていることを不審に思います。くっきりしすぎていて、「ここにいるぞ」と言っているようです。ウェンディゴは基本的には姿を隠しておきたいわけなので、自分のすみかがばれるようなところには痕跡は残さないはず。つまり「これは罠なのでは?」というのがサムの考えでしょう。ディーンにI was thinking that those claw prints, so clear and distinct…「思うんだが、この爪の跡は、とてもはっきりしていて…」とまず言います。printは「印刷、印刷物、印、跡」などの意味です。ちなみに授業で配るプリントは基本的にはhandoutと言います。

 

サムはthey were almost too easy to follow.と続けるのですが、ふつうはtoo… to~ 構文で「…過ぎて~できない」のような意味になりますので、almost「ほとんど」とtoo… to~ 「…過ぎて~できない」を機械的につなげ「ほとんど…すぎて~できない」としてしまいそうです。しかし文脈からは「followするのが簡単すぎる」という意味になるはずです。詳しくは分からないのですが、too easy to ~ は「~するのは簡単すぎる」という意味にはなりますが、「簡単すぎて~できない」には(たぶん)ならないようです(絶対にならないと断定できるほど私は詳しくありません)。実例をコーパスで見てみます。

・What happened in Las Vegas and the next mass shooting and the next one and the one after that are inevitable because it is too easy to obtain weapons that should be the reserve of the military and highly specialized tactical police units,… (COCA)

アメリカの銃の乱射事件の話でしょうが、銃乱射事件は避けられないと言っています。なぜなら「武器を非常に簡単に手に入れられる」からだと言うのですが、下線部は文脈から「~するのは簡単すぎる」の意味としか思えません。

実は最初はtooの前にalmostがあるから「~できない」の意味がなくなるのではないかと考えました。almostは「(あと一歩足りないが)ほとんど」の意味を表します。ということはalmost too …to ~ は「…すぎて~できない一歩前」というわけで、要はぎりぎりできるということになります。実際に以下のような例がありました。

・It was almost too late to catch the train.「遅すぎて電車に乗れない一歩前→ぎりぎりで電車に乗った」

けれどもコーパスの例でも見たように、too easy to ~ の場合はalmostがなくても「~できない」の意味は出ないわけですね。うーん。

少し調べてみると、too ... to ~ 構文は ... にくる形容詞によって解釈が二通りあるのだそうです(以下の例は小澤 (2008) から)。

Chuck is too honest to take a bribe.≒Chuck is so honest that he will not take a bribe. Jim is too willing/ready to take a bribe.≒Jim takes a bribe willingly/readily.

上の方の例が良く知られているtoo to 構文ですね。このスパナチュの場面でのtoo easy to は下の方の例の仲間なのかもしれません。ただしこれもはっきりとは分かりません。easyはtough構文という特殊な構文を作る形容詞の仲間ですから、それが関係しているかもしれません。誰か教えてください。

 

さて、罠ではないかと警戒しているところに、ウェンディゴの気配やうなり声がしてきます。全員固まっていると、ロイの死体が木の上からヘイリーに降ってきます。何とかかわすヘイリー。サムが駆け寄り、You okay? You got it?と聞きます。ここはYou got it!「その通り、任せてくれ」の使い方とは関係ないでしょうget itには「罰を食らう、けがをさせられる、殺される」などの意味があるようなので、ここでは「怪我しなかったか?」という意味でしょう。危険な状況になったのでみんなで逃げ出しますが、ディーンとヘイリーが逃げ切れずに捕まってしまいます。

 

サムとベン、無事なのは二人だけになりました。If it keeps its victims alive, why would it kill Roy?「獲物を生きたままにするなら、どうしてロイを殺したの?」という疑問をベンが発しますが、Honestly, I think because Roy shot at it. He pissed it off.「正直言って、たぶんロイが撃ったからだ。それに激怒したんだ」とサムは答えます。shot at ~ は「~を(目標に)撃つ」ということで、命中したかどうかは何も言っていません。一方、shot ~ と前置詞なしで目的語を足る場合は命中したことを意味します。前置詞のあるなしだけで全く意味が異なるのは面白いですね。pissは「小便(をする)」、piss ~ offで「~をむかつかせる」の意味になります。

 

するとベンが何かを発見します。ディーンが持っていたお菓子が目印として転がっていたのです。パンくずをよくそういう目的で使うことがありますが、ディーンの持っていたお菓子はカラフルで目立つので、It’s better than breadcrumbs.「パンくずよりいいじゃないか」というわけですね。crumbは「(パンなどの)くず、パン粉」です。

 

目印を追っていくと、ウェンディゴのすみかに到着します。ウェンディゴをやり過ごしてディーンたちを発見するサムたち。すると、そこにはトミーも捕まっていました。ヘイリーはCut him down.と言います。cut O ~ で「Oを切って~の状態にする」という使い方があるようです。cut a package open「パッケージを開封する」とかcut the tree down「木を切って倒す、木を切り倒す」などがその例です。トミーはロープでつるされている状態ですので、Cut him downは「彼(のロープ)を切って下におろしてあげて」という意味でしょう。cut ~ downには「~を削減する」や、「~を傷つける、~を殺す」のような意味もあるようですので、勘違いすると大変ですね。

 

家族が再会しているのを横目に、ディーンはウェンディゴが収集した犠牲者たちの荷物からflare gun「照明弾(を撃つ道具)」を発見します。これでウェンディゴに対抗できそうです。

 

参照文献

井上永幸赤野一郎 (編) (2018)『ウィズダム英和辞典』(第4版), 三省堂.

小澤悦夫 (2008)「"Too Adjective to VP"構文の二用法について」『文化論集』32巻, pp.177-196.